「お肉を柔らかくする一番の方法」をご存じでしょうか。
叩く、フォークで刺す、パイナップルに浸す・・・など様々な方法がありますが、本記事では「柔らかさ×おいしさ」を両立できるのはどれか?をご紹介します。
結論から申し上げると「玉ねぎによる漬け込み」が、柔らかさとおいしさを両立できました!
正月やパーティーでローストビーフをよく振舞っている方は、参考にしてください!
すぐにローストビーフを柔らかく作るレシピを見たい方はこちら(記事後半に飛びます。)
ローストビーフを柔らかくするには?
ローストビーフを柔らかくするには、大きく3つの方法があります。
- 酵素を働かせる
- 力を加える(たたく・刺す)
- 筋を切る
これらはどれも「繊維を断ち切る」ということをしています。
酵素には、肉の繊維(コラーゲンやエラスチン)を切る力があります。スーパーで売られている食肉軟化剤やパイナップルは酵素の力を使っています。
叩いたり、刺したりして力を加えると、繊維が断ち切られ肉がほぐれます。また、筋は硬い繊維のことなので、筋を切るというのも物理的に硬い繊維を切っています。
この中で、最も効果的で簡単なのが「酵素を働かせる」ことです!
酵素、と聞くと怪しい物質に聞こえますが、野菜や果物にも含まれている安全なものなので、安心して使うことができますよ。
酵素「プロテアーゼ」で柔らかくする
「プロテアーゼ」は、加水分解という方法で肉の繊維を分解し、肉を柔らかくする力を持っています。
プロテアーゼを含む食品の例
- 玉ねぎ
- パイナップル
- りんご
- キウイ
理想的な食肉軟化剤(肉を柔らかくする添加物)は、筋(すじ)だけを断ち切る酵素ですが、プロテアーゼには、筋だけを断ち切る作用があるのです。
では、「肉の筋(すじ)」って何のことだかご存じでしょうか?
正解は、コラーゲンです!食べ物でいうと、牛すじが代表例です。煮込んだ牛すじはぷるぷるしていて美味しいですが、生の牛すじは硬すぎてとても食べられませんよね。
プロテアーゼは、コラーゲンを分子レベルで分解してくれる優れものなので、ローストビーフも柔らかく作ることができるようになります。
ローストビーフを玉ねぎで柔らかくするコツ
冒頭でも述べたとおり、調査の結果、玉ねぎが柔らかさ×おいしさを両立できました!
他の食品の例も見ながら、玉ねぎでローストビーフを柔らかくするコツを「温度」「時間」から紹介します。
ローストビーフを柔らかくするコツ
漬込 :玉ねぎやりんごに漬け込む
漬込温度:短時間なら常温
:1時間以上なら冷蔵
漬込時間:30分程度
【温度】玉ねぎは何度で漬け込む?
短時間の漬け込みなら常温(25℃)、1時間漬け込むなら冷蔵(4℃)。
玉ねぎに含まれるプロテアーゼはMMP-3 (stromelysin)というもので、MMP-3が活発に活動する温度は体温付近(30~37℃)の温度だと言われています。
常温は20~25℃ですので、冷蔵の4℃よりもMMP-3が活発に活動してくれます。
酵素の働きを考えると常温で漬け込むのが良いですが、衛生的な観点から見ると常温での漬け込みは食中毒リスクげるため危険です。
3時間(夏場は1時間)以上漬け込む場合は、必ず冷蔵庫に入れるようにしましょう。
実際に常温と冷蔵でどれだけ柔らかさに差が出るかを調査しました。
3時間漬け込んだ結果です。縦軸の数字は半分つぶすのにどれだけの力(Pa)を使ったかを表しています。
結果は、全て冷蔵の方が柔らかくなりました。
このように、常温での漬け込みが特別柔らかくなるわけではないため、食中毒リスクなども考えると冷蔵の方が良いと言えるでしょう。
【時間】何時間漬け込めばよい?
30分程度漬け込みましょう。
もちろん、漬け込めば漬け込むほど繊維が分解されて柔らかくなりますが、漬け込みすぎると柔らかいを通り過ぎてボロボロになってしまいます。
15分ほどでも柔らかくなります。30分ほどを目安に漬け込みましょう。調査では3時間ほど漬け込みましたが、柔らかいを通り越してボロボロになってしまいました…笑
機会があればもう少し大きめにカットし、時間を変えてどれだけ柔らかくなるかを調べてみたいと思います。
ローストビーフをさらに柔らかくする方法
玉ねぎを使う以外にも、以下の方法でローストビーフを柔らかくできます。
- フォーク刺し・pH調整で下処理を行う
- 繊維を断つように切る
- 55℃で3時間17分以上加熱する
【下処理】フォーク刺し・pHの調整は?
さらに柔らかくしたいならしましょう!
お肉を柔らかくする方法として、お肉をたたいたり、フォークで刺したりするという方法があります。もちろんこれらも繊維を物理的に断ち切れるので、肉を柔らかくできます。
短時間で簡単にお肉が柔らかくなるので、家に玉ねぎやパイナップルなどがなかったり、漬け込む時間が取れない時は試してみてください。
ただし、酵素の方が柔らかくなりやすいので、特に柔らかく作りたいときは酵素の力を借りるのがおすすめです。
また、pHを下げてお肉を柔らかくする方法もありますが、ご家庭にpH測定器はまずないと思いますし、たたいたり漬け込む方が楽なので、pHは考えなくてもOKです。
参考までに、pHの低い食品を紹介します。
食品名 | pH |
---|---|
コーラ | 2.4 |
りんご | 3.0 |
ワイン | 3.8 |
ヨーグルト | 4.0 |
炭酸水 | 4.5 |
これらはどれもお肉に漬け込めるので、興味がある方は試してみてください。ただし、それぞれの風味が付いてしまうので、好みは分かれます。
りんごやワインなどは風味が付いてもおいしくなりやすいので、アレンジしてみるのも良いかもしれませんね。
【切り方】ローストビーフを柔らかくする切り方は?
繊維を断つように切りましょう。
肉には、繊維の向きがあります。白い筋のような線が繊維です。肉の繊維は硬いため、残してしまうと硬い食感になってしまいます。
それを断つように、繊維に対して垂直に切ると、ローストビーフは柔らかくなります。
またローストビーフは、焼いた肉をすぐに切らず、少し休ませてから切りましょう。そうすることで、肉汁の流出が防げるため、うま味を肉に残すことができますよ。
【加熱温度・時間】何度で何分加熱すればよい?
55℃で3時間17分以上加熱すれば、最も柔らかくなります。
肉は高温で加熱するとたんぱく質が変性し、硬くなってしまいます。そのため、可能な限り低温で調理すると、柔らかくなります。
しかし、加熱が十分に行われていないと、食中毒リスクが高くなります。厚生労働省は、ローストビーフを最低でも55℃以上で97分以上加熱しなければならないと定めています。
しかし、97分の加熱時間のほか、内部に熱が入るまでの時間も考慮しなくてはなりません。
食品安全委員会は、58℃の湯せんの場合、内部の温度が58℃になるまで約100分かかると公表しています。
つまり55℃では、熱が内部に通るまで100分以上、食中毒菌を殺菌するために97分、合計197分以上加熱する必要があります。
加熱しすぎもローストビーフが硬くなる原因になりますが、食中毒を防ぐためにしっかり加熱時間を取ることも忘れないでください!
【レシピ】安い肉から柔らかローストビーフに!
ここでは、ローストビーフを「柔らかく」かつ「簡単」に作ることに焦点を当てたレシピを紹介します。
漬け込んだ材料をソースにも使える玉ねぎを使って、ローストビーフを柔らかくしていきます。
材料 | 分量 |
---|---|
牛もも肉 | 300g |
玉ねぎ | 1個 |
水 | 50mL |
ワイン(または酒) | 大さじ3 |
みりん | 大さじ2 |
醤油 | 大さじ2 |
にんにく | 2片(チューブ小さじ1) |
塩 | 小さじ1 |
コショウ | 適量 |
step.1
玉ねぎをすりおろす
step.2
ローストビーフの各面10箇所ほどフォークで刺す
step.3
ローストビーフを、すりおろした玉ねぎに30分常温で漬け込む
※1時間以上漬け込む場合は冷蔵step.4
玉ねぎを別皿に移す(捨てない!)
step.5
玉ねぎをキッチンペーパーで拭き取り、塩コショウ・にんにくを塗りこむ
※玉ねぎが付いたまま焼いてしまうと、玉ねぎが焦げますstep.6
中火~強火で肉の各表面を2分ほど焼く
step.7
全ての面が焼けたら、水・酒・醤油を加えて、蓋をして8分間弱火で焼く
step.8
アルミホイルに包んで30分ほど放置する
step.9
お肉を焼いたフライパンに、漬け込んだ玉ねぎ・みりん(お好みで砂糖)を加えて煮詰める(ソース)
step.10
お肉を切り、ソースをかけて完成
柔らかさを考慮したのは5までですので、6以降はお好みの調理方法があればそちらで作っていただいても柔らかいローストビーフになります!
まとめ|ローストビーフは玉ねぎの酵素で柔らかくなる
- 玉ねぎ・パイナップルに漬け込む(酵素)
- ヨーグルト・りんごに漬け込む(pHを下げる)
- たたく・刺す
お肉は繊維を切ることで柔らかくなります。
玉ねぎやパイナップルに30分漬け込むだけで柔らかくなるので、ご家庭に材料がありましたら、試してみてはいかがでしょうか。
美味しいアレンジ法などありましたらENAの公式Twitterでぜひ教えてください!試させていただきます!
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