「グルテンフリー」にどんなイメージを持っていますか?
なんとなく健康そう
やらないよりやった方がよさそう
そう思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、グルテンフリーは実践すべき人と、すべきでない人がいます。
グルテンフリー食を実践したことがある方でも
- そもそもグルテンとは何か
- グルテンフリー食はなぜ推奨されているのか
- グルテンフリー食で不足する栄養素は何か
を説明できる方は少ないのではないかと思います。
本記事では、グルテンフリー食の影響や注意点を解説します。
グルテンフリー食を実践している方はもちろん、これから導入しようかと考えている方は参考にしていただければ幸いです。
グルテンフリーで身体はこう変わる
グルテンフリー食は「グルテン」を排除した食事のことを言います。
グルテンとは?(クリックで詳細)
グルテン
グルテンは、小麦に含まれる「グルテニン」と「グリアジン」というたんぱく質が結びついてできたたんぱく質のことです。
小麦に「水」と「力」を加えることによって「グルテニン」と「グリアジン」が結合し、粘着力と弾力のある「グルテン」が生成します。
グルテンフリー食では「グルテン」を排除する必要があるため、摂取できる食品が限られます。
それらを排除することで、身体にどのような影響が出るかを解説します。
BMI・体重の増加リスク
グルテンフリー食を実践すると、BMI・体重・脂肪量・メタボリックシンドロームのリスクが増加することが明らかになっています。
ハーバード大学の関連医療機関による研究では、グルテンフリー食を行った37.8%の被験者のBMI・体重・脂肪量が増加したと報告されました。
さらに小児がグルテンフリー食をするとBMI・体重・脂肪量が増加することは10以上の研究によって明らかにされており、一般的な認識とまでなっています。
グルテンフリー食品は、グルテンの働きを補うために
- でんぷんなどの表面活性剤
- ハイドロコロイドやガムなどのたんぱく質や脂肪分
- 乳製品や卵たんぱく質
がよく添加されます。
これらは風味や食感を改善しますが、体重や脂肪量を増やす原因となります。
体重や脂肪量を増やす理由(クリックで詳細)
3つの要因
でんぷんが60∼80℃に達して水と合わさると、α-アミラーゼによる加水分解が進み、食品のGI値が高まる
→血糖値を一気に上昇させる
味を良くするために高脂肪粉末や低脂肪乳粉末がよく使用される
→高カロリーになりやすい
小麦粉が使えないため、米やトウモロコシが使用される
→食物繊維・葉酸の量が足りなくなる(加えて微量栄養素も不足しやすい)
参考文献
Kabbani TA, Goldberg A, Kelly CP, Pallav K, Tariq S, Peer A, Hansen J, Dennis M, Leffler DA. Body mass index and the risk of obesity in coeliac disease treated with the gluten-free diet. Aliment Pharmacol Ther. 2012 Mar;35(6):723-9.
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Lamacchia C., Camarca A., Picascia S., Di Luccia A., Gianfrani C. Cereal-Based Gluten-Free Food: How to Reconcile Nutritional and Technological Properties of Wheat Proteins with Safety for Celiac Disease Patients. Nutrients. 2014;6:575–590.
Melini F., Melini V., Luziatelli F., Ruzzi M. Current and Forward-Looking Approaches to Technological and Nutritional Improvements of Gluten-Free Bread with Legume Flours: A Critical Review. Compr. Rev. Food Sci. Food Saf. 2017;16:1101–1122.
Hager A.-S., Wolter A., Jacob F., Zannini E., Arendt E.K. Nutritional properties and ultra-structure of commercial gluten free flours from different botanical sources compared to wheat flours. J. Cereal Sci. 2012;56:239–247.
メタボリックシンドロームになるリスク
グルテンフリー食は、メタボリックシンドロームの発症率を上げることが明らかになっています。
12ヶ月間グルテンフリー食を実践した研究によると、開始時には2%だったメタボリックシンドローム患者が、終了時には29.5%にまで増加したと報告されました。
他の研究では、グルテンフリー食をすることでメタボリックシンドロームの発症率が3.24%から4.5倍の14.59%に増加するとの報告がされました。
原因は、BMI・体重が増加した理由と同じです。
参考文献
Tortora R., Capone P., Stefano G.D., Imperatore N., Gerbino N., Donetto S., Monaco V., Caporaso N., Rispo A. Metabolic syndrome in patients with coeliac disease on a gluten-free diet. Aliment. Pharmacol. Ther. 2015;41:352–359.
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Ciccone A., Gabrieli D., Cardinale R., Di Ruscio M., Vernia F., Stefanelli G., Necozione S., Melideo D., Viscido A., Frieri G., et al. Metabolic Alterations in Celiac Disease Occurring after Following a Gluten-Free Diet. Digestion. 2018;14:1–7.
腸内環境が悪化するリスク
グルテンフリー食を実践すると、腸内の善玉菌が減り、悪玉菌が増えることがわかっています。
グルテンフリー食をすると多糖類の摂取量が減る傾向にあります。多糖類は善玉菌のエネルギー源です。
多糖類が不足してしまうと善玉菌のエネルギー源が減り、善玉菌が減少します。
善玉菌が不足すると悪玉菌が増加し、腸内環境が悪化してしまうのです。
参考文献
Sanz Y. Effects of a gluten-free diet on gut microbiota and immune function in healthy adult humans. Gut Microbes. 2010;1:135–137.
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De Palma G., Nadal I., Collado M.C., Sanz Y. Effects of a gluten-free diet on gut microbiota and immune function in healthy adult human subjects. Br. J. Nutr. 2009;102:1154–1160.
グルテンフリー食は病気の治療法、健康食品ではない。
ここまで読んでいただいた方には
「悪い影響しか書いてないじゃないか」
と思われるかもしれません。
しかし、「健康的な食事」=「栄養バランスの良い食事」です。
グルテンフリーは、グルテンを排除しようとする食事法です。何かを排除している時点で、健康的な食事法とは言えません。
では、なぜグルテンフリー食というものができたのでしょうか。
グルテンフリー食が必要な人
グルテンフリー食は、小麦やグルテンをアレルギーとしている方への治療法として考えられた食事療法です。
グルテンフリー食での治療が必要な疾患は以下の3つです。
- 小麦アレルギー
- グルテン過敏症
- セリアック病
これらの疾患を持っている方は、グルテンを摂取すると腹痛や下痢などの症状を引き起こします。
セリアック病とは
セリアック病は、グルテンに対する異常な免疫反応を示す自己免疫疾患のことです。
セリアック病に対する唯一の対処法がグルテンフリー食のため、セリアック病の方にとってグルテンフリー食は欠かせない食事療法です。
セリアック病患者はグルテンフリー食をする必要がありますが、グルテンフリー食は高額で見つけるのが困難など一般の食事に比べて多くの障害があります。
近年セリアック病への理解が進み、グルテンフリー食品は劇的な進化を遂げていますが、グルテンフリー食の改善がまだまだ食品業界の課題の一つとなっています。
グルテンの摂取は推奨されている
グルテンフリー食は一種の「流行」となっていますが、食事に関わるガイドラインでは摂取が推奨されている成分でもあります。
この図はハーバード大学が公表している食事のガイドラインなのですが、食事の1/4はWHOLE GRAINS=「全粒穀物」を摂取することを推奨しています。
全粒穀物の内訳をみても、whole-wheat bread=「全粒穀物で作られたパン」を摂取するよう勧めています。
全粒穀物は、文字通り「穀物の粒全て」のことです。全粒穀物で作られたパンにはもちろんグルテンが含まれています。
ハーバード大学の食事ガイドラインの他、アメリカや中国、日本のガイドラインでもバランスの取れた食事が勧められており、その内訳にはパンが入っています。
グルテンを摂っても特に健康被害がない方は、無理にグルテンを避ける必要はありません。
【まとめ】グルテンフリー食について
グルテンフリー食について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
グルテンに対する疾患をお持ちの方はもちろんグルテンフリー食を実施するべきですが、グルテンを摂取しても問題がない方がグルテンフリー食を行うと、かえって不健康になる可能性が高いです。
グルテンフリー食を実施するときには、正しい知識を持って行いましょう。
ENAでは、食品添加物をはじめとする「食」に関する情報を、確かな証拠に基づいて解説しています。普段の食生活や「食」の学習に役立てていただければ幸いです。