コラム

睡眠の質を高める食事はコレ【摂るべき栄養素3選】

2022年9月12日

世界的な平均睡眠時間は何時間かをご存じでしょうか。

 

正解は「8時間25分」です。

 

対して、日本人の平均睡眠時間は6時間48分であり、世界全体の平均と比べてかなり短いことがわかります。

 

ご覧になっている方の中には、睡眠時間が足りていないことはわかっているものの、忙しくてなかなか寝られないという方もいるのではないでしょうか。

 

睡眠不足は仕事や勉強の効率を下げるだけでなく、疾病リスクを上げるなどの様々な”害”が最近の研究で明らかになっています。

 

本記事では、なかなか寝る時間が取れないという方のために「睡眠の質を高める食事」を紹介します。

 

寝不足を感じている方は、ぜひ普段の食生活で実践してみてください。

 

睡眠の質を高める食事

睡眠の質は、生活リズムや生活習慣に大きく影響されますが、食事によって改善することができます。

 

ここでは、睡眠の質を上げることがわかっている栄養素を3つご紹介します。

トリプトファン

トリプトファンは、自然な目覚めを促す「セロトニン」と、夜に眠気を促す「メラトニン」の材料です。

 

トリプトファンが多く含まれている食べ物

豆腐・納豆などの大豆製品

牛乳・ヨーグルトなどの乳製品

 

トリプトファンを摂るとセロトニンとメラトニンが正常に分泌されるため、朝はすっきり起きることができ、夜は自然と眠たくなります。

 

トリプトファンは規則正しい生活を送るためには欠かせないアミノ酸です。

 

トリプトファンとは?(クリックで詳細)

 トリプトファン

 

トリプトファンは、体内で合成することができない「必須アミノ酸」の一つであり、セロトニンとメラトニンの産生に必要なアミノ酸です。


トリプトファンは「5-ヒドロキシトリプトファン」を経てセロトニンとなり、さらに「N-アセチルセロトニン」を経てメラトニンへと変化します。

トリプトファンは人が太陽光を浴びることでセロトニンへと変換され、その約14時間後にメラトニンに変換されます。

 

 

特に、トリプトファンを朝に摂ることで、

 

  • 朝型の規則正しい生活を送れるようになる
  • 質の高い(深い眠り〈=ノンレム睡眠〉が多い)睡眠が取れるようになる

 

ということが、日本で行われた研究によって明らかになっています。

 

和食であれば豆腐や納豆、洋食であれば牛乳やヨーグルトなどが摂りやすいと思います。

ぜひ普段の朝食にプラスしてみてください。

参考文献

Hartmann E. Effects of L-tryptophan on sleepiness and on sleep. Journal of Psychiatric Research. 1982;17(2):107–113.

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Harada T., Hirotani M., Maeda M., Nomura H., Takeuchi H. Correlation between breakfast tryptophan content and morningness–eveningness in Japanese infants and students aged 0–15 yrs. Journal of Physiological Anthropology. 2007;26(2):201–207.

 

GABA

GABAは近年注目を浴びている栄養素の一つです。

ストレスを軽減する効果でよく知られていますが、睡眠の質を高める効果も明らかになっています。

 

GABAが多く含まれている食べ物

漬物・ヨーグルトなどの乳酸菌発酵食品

トマト・アスパラガスなどの一部の野菜

 

そもそもGABAとは?

GABAは「ガンマアミノ酪酸」というアミノ酸で、gamma-aminobutylic acidの略称です。

 

GABAは交感神経の働きを抑制し、リラックス効果をもたらすアミノ酸の一つです。

睡眠の質を上げてくれるだけでなく、睡眠導入を速やかにする効果を持っています。

 

最近の研究では、不眠症の患者40人がGABAを4週間にわたり1日300mg摂取したところ、睡眠導入時間が減少し、深い睡眠が取れるようになったとの報告がされています。

 

しかし、含有量の多いトマトでも100g当たりのGABA含有量は50mgほどとなっているため、食事から300mgのGABAを摂取するのはかなり難しいと言えます。

GABAはサプリメントが充実していますので、効果を実感したい方はサプリメントを活用すると良いでしょう。

参考文献

Byun J. I., Shin Y. Y., Chung S. E., Shin W. C. Safety and efficacy of gamma-aminobutyric acid from fermented rice germ in patients with insomnia symptoms: a randomized, double-blind trial. Journal of Clinical Neurology. 2018;14(3):291–295.

 

オメガ3

オメガ3は脂肪の一つです。脂肪と聞くと身体に悪いと感じる方も多いと思いますが、オメガ3は摂取目標量が決められている「摂った方が良い」脂肪で、様々な疾病リスクを下げることが明らかになっています。

 

しかし、ごま油やバターなどの油にはオメガ3が含まれていないため、意識して摂取する必要があります。

 

オメガ3が多く含まれている食べ物

マグロ・サバ・サンマなどの青魚

 

オメガ3にはDHAとEPAが含まれていますが、それら2つが睡眠の質を上げると明らかになっています。

 

ある研究では、EPA・DHAを十分に摂ることで、深い睡眠であるノンレム睡眠の割合が増え、平均58分間も睡眠時間が増えたと報告されています。

 

魚の種類

100g当たりのDHA・EPAの合計含有量(mg)

さんま

2400

さば

1600

さけ

1500

いわし

1200

あじ

800

 

DHAとEPAは1日あたり合計1000mgの摂取が推奨されています。

魚を100g程度食べれば簡単に達するので、普段魚をあまり食べない方は意識して摂るようにすると良いでしょう。

参考文献

Lavialle M., Champeil-Potokar G., Alessandri J. M., et al. An (n-3) polyunsaturated fatty acid-deficient diet disturbs daily locomotor activity, melatonin rhythm, and striatal dopamine in Syrian hamsters. The Journal of Nutrition. 2008;138(9):1719–1724.

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Montgomery P., Burton J. R., Sewell R. P., Spreckelsen T. F., Richardson A. J. Fatty acids and sleep in UK children: subjective and pilot objective sleep results from the DOLAB study--a randomized controlled trial. Journal of Sleep Research. 2014;23(4):364–388.

 

炭水化物の摂りすぎは睡眠の質を下げる

ここまで、睡眠の質を上げるために摂った方が良い食品について紹介してきましたが、ここでは摂取を控えた方が良い食品を紹介します。

 

それが「炭水化物」です。

 

ある研究では、炭水化物の摂取量と不眠症の発症率には相関関係があると明らかにしています。

 

また、日本で行われた研究では、炭水化物の多い菓子類の摂取量が多い人は睡眠の質が低くなりやすいことが報告されています。

 

これは糖類の多量摂取によるホルモンバランスの乱れや、腸内フローラの変化によって睡眠が妨害されるためだと考えられています。

 

もちろん、炭水化物を摂ること自体はまったく問題ありませんが、間食での摂取や大量に撮り続けていると睡眠の質を下げてしまいます。

 

心当たりがあれば、少しづつ減らしてみると良いでしょう。

参考文献

Gangwisch J. E., Hale L., St-Onge M.-P., et al. High glycemic index and glycemic load diets as risk factors for insomnia: analyses from the Women's Health Initiative. The American Journal of Clinical Nutrition. 2020;111(2):429–439.

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Katagiri R., Asakura K., Kobayashi S., Suga H., Sasaki S., the Three‐generation Study of Women on Diets and Health Study Group Low intake of vegetables, high intake of confectionary, and unhealthy eating habits are associated with poor sleep quality among middle-aged female Japanese workers. Journal of Occupational Health. 2014;56(5):359–368.

Gais S., Born J., Peters A., et al. Hypoglycemia counterregulation during sleep. Sleep. 2003;26(1):55–59.

Kim Y., Chen J., Wirth M. D., Shivappa N., Hebert J. R. Lower dietary inflammatory index scores are associated with lower glycemic index scores among college students. Nutrients. 2018;10(2):p. 182.

Gerard C., Vidal H. Impact of gut microbiota on host glycemic control. Frontiers in Endocrinology. 2019;10:p. 29.

 

【まとめ】睡眠の質を高める食事について

本記事では、睡眠の質を上げるために摂取すると良い食べ物・控えた方が良い食べ物を紹介してきました。

 

「寝ているのに疲れが取れない」という方は、

  • トリプトファン
  • GABA
  • オメガ3

を意識して摂り、炭水化物の多量な摂取を控えると、その悩みを解決できるかもしれません。

一度試してみてはいかがでしょうか。

 

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