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妊婦が摂るべき栄養素はどれ?簡単で栄養価の高い夜ご飯レシピを解説

2024年6月14日

妊娠中の食事は、お母さんの健康や胎児の発育において非常に大切です。

しかし、妊娠中には不足しやすい栄養素や、摂りすぎてはいけない栄養素がいくつかあります。そのため、普段よりも食べるものに注意しなくてはなりません。

本記事では、妊娠中に積極的に摂りたい栄養素や簡単な夜ご飯メニューなどを紹介します。

妊娠中に気を付けるべきポイントも解説するので、妊娠中の食事の参考にしてくださいね。

妊娠中の食事は胎児の発達に大きな影響を与える

野菜を食べる妊婦

妊娠中はお母さんが食べたものが胎児の栄養になるため、妊娠中の食事は胎児の発育に大きな影響を与えます。

必要な栄養素が確保できていないと胎児の体重が十分に増えず、発育不全や低出生体重児のリスクが高くなります。

また、お母さんの健康状態が悪化したり、流産や早産が発生したりすることもあるため、妊娠中はバランスを整えながら必要な栄養素をしっかり確保することが大切です。

妊婦が積極的に摂りたい栄養素・食材

妊婦が摂りたい緑黄色野菜

妊娠中の食事はバランスを整えることが基本ですが、胎児の発育のため積極的に摂りたい栄養素も存在します。

妊娠時期によってそれぞれの必要量も変化するため、特に妊婦さんが積極的に摂りたい栄養素について確認しておきましょう。

エネルギー(kcal)たんぱく質(g)葉酸(μg)カルシウム(mg)鉄(mg)
非妊娠時2000(18~29歳)
2050(30~49歳)
502406506.5
妊娠初期+50+0+240+0+2.5
妊娠中期+250+5+240+0+9.5
妊娠後期+450+25+240+0+9.5
授乳期+350+20+100+0+2.5

※推定エネルギー必要量は身体活動レベルⅡの場合
※非妊娠時の鉄分は月経なしの場合
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

妊娠中は時期に応じて、エネルギー摂取量やたんぱく質、鉄分などを通常時より多く摂る必要があります。

鉄分

妊娠中は胎児への栄養を運ぶために普段より多くの血液が必要となるため、血液の材料となる鉄分の必要量が増加します。

鉄分が不足すると貧血を引き起こしやすくなるほか、胎児の発育不全や早産などのリスクも高まります。

鉄分は妊娠初期から必要量が増えます。鉄分を多く含む以下のような食材を積極的に摂りましょう。

  • 赤身の牛肉
  • カツオ
  • 小松菜

鉄分はビタミンCやたんぱく質と一緒に摂ることで吸収が促進されるため、肉や果物などと一緒に食べることで吸収率が高まります。

出典:埼玉医科大学病院 予防医学センター看護室「予防医学センターだよりNo.24」

葉酸

葉酸はビタミンB群に含まれる水溶性ビタミンの一種で、細胞や血液の合成をサポートするはたらきがあります。

妊娠前や妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の脳や脊髄の発達異常である「神経管閉鎖障害」のリスクが高まることがわかっています。

神経管閉鎖障害は先天障害の一つで、運動や排泄の機能に障害を及ぼします。

葉酸は妊娠中に不足しやすい栄養素のため、授乳が終わるまでは意識的に摂るようにしましょう。

  • 青菜類(ほうれん草、小松菜など)
  • ブロッコリー
  • バナナ

葉酸は水に溶けやすく熱に弱い性質があります。そのため、葉酸を摂取する目的であれば茹でずに生のまま食べるとよいでしょう。

カルシウム

妊婦はヨーグルトを意識的に摂る必要がある

カルシウムは、胎児の骨格作りに欠かせない栄養素です。

妊娠中にカルシウムを特別多く摂る必要はありませんが、そもそも日本人はカルシウムが不足気味な傾向にあります。

そのため、妊娠中は以下のようなカルシウムを多く含む食材を意識的に摂るようにしてみてください。

  • 牛乳、ヨーグルトなどの乳製品
  • 小魚類
  • 大豆製品

また、ビタミンDはカルシウムの吸収率を上げることがわかっています。

ビタミンDは干ししいたけやきくらげ、いわしやかつおなどの魚介類に多く含まれています。乳製品を摂る際には、これらの食材も一緒に摂り入れてみてください。

たんぱく質

たんぱく質は筋肉や血液など体のもとになる栄養素です。胎児の正常な発育のためも、たんぱく質はしっかりと摂る必要があります。

たんぱく質は以下のような身近な食材に含まれています。

  • 大豆製品

特に、朝はたんぱく質が不足する傾向にあります。夕食の残り物や既製品を活用するなどして、朝食のたんぱく質が不足しないよう工夫してみてください。

また、たんぱく質からエネルギーを作り出すにはビタミンB6が必要です。

ビタミンB6は、赤身の魚や脂質の少ない肉類(ヒレ肉やささみなど)、玄米、バナナ、くるみなどに豊富に含まれています。

妊婦が注意したい栄養素・食材

妊婦は魚を食べすぎると水銀の過剰摂取になることがある

妊娠さんが積極的に摂りたい栄養素がある一方で、過剰摂取に注意したい栄養素もあります。

水銀

魚介類に含まれる水銀を妊娠中に過剰摂取すると、胎児の発育に影響を及ぼす可能性があります。

妊娠中の水銀の過剰摂取は胎児の中枢神経の発達に悪影響を与えるとされており、たとえば音を聞いたときの反応が遅れることなどが指摘されています。

鮭やイワシなどの魚は食べても問題ないことが多いですが、大型のマグロやイルカなどの大きな魚は水銀濃度が高いため、妊娠中は避けたほうがよいでしょう。

  • メバチマグロ、クロマグロ
  • メカジキ
  • キンメダイ

魚は良質なたんぱく質を多く含み、バランスの良い食事には欠かせない食材ですが、取り入れる魚の種類や量には気をつけましょう。

ヨウ素

妊婦は昆布やわかめに含まれるヨウ素に注意する必要がある

ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成や認知機能の発達に必要な栄養素です。

しかし過剰摂取になると、胎児の甲状腺機能が低下するリスクが報告されているため、以下のような海藻類の摂取量には注意が必要です。

  • 昆布(塩昆布や佃煮など)
  • わかめ
  • ひじき

特に昆布はヨウ素の含有量が非常に多いため、毎日昆布をそのまま食べることは控えましょう。

ビタミンA

ビタミンAは皮膚の粘膜や目などの健康維持に欠かせない栄養素ですが、妊娠初期に過剰に摂取すると、胎児の器官形成に異常が起こるリスクがあります。

  • うなぎ
  • レバー

うなぎやレバーは特にビタミンAの含有量が多いため、取り入れる場合は週1回を目安にしましょう。

ただし、妊娠後期はビタミンAの必要量が増えるため、過度に控えすぎるのではなく、時期に応じて摂取量を調整することが大切です。

生もの・加熱殺菌していないもの

妊婦はナチュラルチーズや生ハムなどの生ものに注意する必要がある

生魚や生肉、生卵などの生ものは、妊娠中の摂取に注意が必要です。

生ものは加熱により殺菌されていないため、寄生虫や菌が付着している可能性が高く食中毒に感染するリスクが高くなります。

妊婦が食中毒になると、母体が重篤な症状にならなくても、流産や死産を引き起こすことがあります。

加熱殺菌していない以下のような食材は、リステリア菌による食中毒のリスクが高いため、妊娠中は避けるようにしてください。

  • ナチュラルチーズ
  • 生ハム
  • スモークサーモン
  • パテ

妊娠中は通常時よりもリステリア菌に感染しやすく、流産や死産、低出生体重児などの原因になります。

リステリア菌は低温にも強く、冷蔵庫で保存していても増殖するため、妊娠中は加熱殺菌された食材を選択しましょう。

時期別|妊婦におすすめのメニュー

妊娠中はバランスの良い食事をとることが基本ですが、時期によって積極的に摂りたい栄養素や適切な食事量には違いがあります。

妊娠初期のポイント

つわりによって食欲が減退することも多いため、無理をしなくても食べられるものから栄養を摂るようにしましょう。

また、葉酸は妊娠初期から必要量が増える栄養素のため、通常の食事が摂れる妊婦さんは緑の野菜やバナナなども意識して摂るとよいでしょう。

妊娠中期のポイント

主食・主菜・副菜のバランスを整えながら、妊娠前よりたんぱく質や鉄分が多く摂れるメニューを意識することが大切です。

妊娠後期のポイント

たんぱく質や摂取エネルギー量を妊娠前より増やす必要があります。適度に間食も取り入れながら、バランスを整えるようにしましょう。

妊娠初期|ぶりのピリ旨ごま焼き・大根のそぼろ煮・チンゲンサイのお吸い物

妊娠初期におすすめのぶりのピリ旨ごま焼きの献立

出典:米穀安定供給確保支援機構【夕食】ぶりのピリ旨ごま焼きの献立

ぶりのピリ旨ごま焼き

具材:ぶり、れんこん、パプリカ、ねぎ、しょうが、白ごま
調味料:豆板醤、酢、砂糖、しょうゆ、ごま油

EPAやDHAが豊富な魚は、胎児の認知能力を向上するためにも定期的に取り入れたい食材です。

ぶりは水銀の含有量が比較的少ない魚であるため、妊娠中でも安心して食べられます。

大根のそぼろ煮

具材:大根、しょうが、豚ひき肉
調味料:砂糖、しょうゆ、米粉

少ない材料で作れる大根のそぼろ煮は、作り置きおかずにもおすすめです。

チンゲンサイのお吸い物

具材:チンゲンサイ、乾燥しいたけ
調味料:だし汁、塩、しょうゆ、こしょう

チンゲンサイには葉酸やカルシウム、乾燥しいたけにはビタミンDが豊富に含まれており、妊娠初期に摂りたい栄養素がしっかり摂れる1杯です。

妊娠中期|ハンバーグ・野菜の付け合わせ・しじみの味噌汁

妊娠中期におすすめのハンバーグ・野菜の付け合わせ・しじみの味噌汁

出典:札幌市「妊婦さん向け献立1週間(妊娠中期~後期)」

ハンバーグ

具材:牛ひき肉、玉ねぎ、高野豆腐すりおろし、低脂肪乳、卵
調味料:塩、こしょう、油、トマトケチャップ、中濃ソース、赤ワイン、砂糖

ハンバーグのつなぎに高野豆腐のすりおろしを使うことで、カルシウムや鉄分が手軽に補えます。

野菜の付け合わせ

具材:じゃがいも、にんじん、ブロッコリー
調味料:塩、砂糖、バター

粉ふき芋・にんじんのグラッセ・ブロッコリーを添えることで、食物繊維やビタミン、ミネラルが摂取できます。

しじみの味噌汁あ

具材:しじみ、長ねぎ
調味料:だし汁、味噌

しじみには血液の材料となる鉄分やビタミンB12が豊富に含まれているため、妊娠中の貧血予防に最適です。

妊娠後期|サバの竜田揚げ・レバーとニラの炒め物

妊娠後期におすすめのサバの竜田揚げ・レバーとニラの炒め物

出典:札幌市「妊婦さん向け献立1週間(妊娠中期~後期)」

サバの竜田揚げ

具材:サバ、大根おろし
調味料:しょうゆ、料理酒、おろししょうが、片栗粉、揚げ油

大根おろしにはビタミンCが豊富に含まれているため、サバに含まれるたんぱく質の吸収率を高めることができます。

レバーとニラの炒め物

具材:豚レバー、ニラ、赤パプリカ、もやし
調味料:おろしにんにく、おろししょうが、油、料理酒、しょうゆ、オイスターソース、こしょう

鉄分豊富なレバーとビタミンCが豊富なパプリカを組み合わせることで、鉄分の吸収率を高められます。

一品だけで簡単!妊婦におすすめの夜ご飯

ここでは、一品だけで簡単にバランスがとれるおすすめの夜ご飯を紹介します。

一品だけですべての栄養素を完全に補えるわけではありませんが、忙しいときや疲れているときなど食事を簡単に済ませたいときの参考にしてください。

焼肉丼

妊婦におすすめの一品料理である焼肉丼

出典:札幌市「妊婦さん向け献立1週間(妊娠中期~後期)」

焼肉丼

具材:雑穀入りご飯、牛もも肉、赤パプリカ、ピーマン、キャベツ
調味料:焼肉のたれ、料理酒、塩、こしょう、油

どんぶりメニューは、手軽に主食・主菜・副菜が揃えられる夜ご飯としておすすめです。

また、白米を雑穀入りご飯にすれば、食物繊維やビタミン、ミネラルの摂取量を効率よく増やせます。

カオマンガイ

妊婦におすすめの一品料理であるカオマンガイ

出典:米穀安定供給確保支援機構「カオマンガイの献立」

カオマンガイ

具材:米、鶏もも肉、にんじん、パプリカ、かぶ、トマト、レタス
調味料:鶏がらスープ顆粒、料理酒、しょうゆ、塩、こしょう、酢、砂糖、おろししょうが、おろしにんにく、一味唐辛子

カオマンガイは炊飯器を使って作ることで、ご飯、鶏肉、付け合わせの野菜が一度に完成します。

納豆とろろそば

妊婦におすすめの一品料理である納豆とろろそば

出典:札幌市「妊婦さん向け献立1週間(妊娠中期~後期)」

納豆とろろそば

具材:そば、納豆、長芋、おくら、めかぶ、長ねぎ
調味料:めんつゆ

ねばねば食材を複数トッピングしたそばは、一品で主食・主菜・副菜を揃えられます。

妊婦が食事以外に注意したいこと

ここまで妊娠中の食事について解説しましたが、妊娠中は食事以外にも注意したいことがあります。

お酒・たばこを完全にやめる

妊娠中にお酒を飲むと、アルコールを含んだ血液が胎児に届き、知能障害や小児麻痺、てんかんなどに繋がるリスクが高まります。

少量のアルコールでも影響が出る場合があるため、妊娠が判明したらお酒は完全にやめましょう。

また、たばこも胎児に大きな影響を及ぼすため、妊娠中はNGです。

たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素は血液中の酸素濃度を下げるため、脳や心臓の疾患を持つリスクや、低出生体重児になる可能性が高まります。

カフェインを摂りすぎない

妊婦はカフェインによる悪影響を受けやすいと考えられています。

胎児に及ぼす影響は定かではありませんが、カフェインを摂りすぎると流産や低出生体重児のリスクが増大すると指摘されています。

妊婦のカフェイン摂取量は、1日あたり300mg(マグカップ2杯半)以下にするよう推奨されています。

口腔ケアを徹底する

妊娠中は、女性ホルモンの増加によって口腔内の細菌が増殖しやすいほか、唾液の分泌量が減少することにより、虫歯になりやすい傾向にあります。

また、つわりの時期は食嗜好が変化したり歯磨きの回数が減ったりする場合があるため、口腔環境が悪化しやすいといわれています。

そのため妊娠中はいつも以上に口腔ケアを意識して、こまめな歯磨きや歯科医院での定期受診が重要です。

妊娠中の夜ご飯に関するよくある質問

妊婦に限らず栄養バランスが整った食事が健康に良い

ここでは、妊娠中の夜ご飯に関するよくある質問にQ&A形式で回答します。

妊娠中に夜ご飯を抜いてもいい?

食べられないときは夜ご飯を抜いてもOKです。

妊娠中は1日3食バランスよく食べることが基本ですが、妊娠初期は特につわりの症状が出る方も多く、食欲がわかない場合もあります。

そのようなときは、食べられるときに食べられるものを無理せず摂れば問題ありません。

なかなか食事がとれないときには、上記で紹介した一品メニューやコンビニの軽食などを活用してもよいでしょう。

妊娠中におすすめの食事の組み合わせは?

各栄養素それぞれの吸収率を高めるためには、以下の組み合わせがおすすめです。

  • 鉄分+ビタミンC・クエン酸・たんぱく質
  • カルシウム+ビタミンD
  • たんぱく質+ビタミンB6・B2・C

ビタミンCは野菜や果物に、クエン酸は柑橘類やお酢、梅干しなどに多く含まれます。

また、ビタミンDは魚介類やきのこ類、ビタミンB6は赤身肉や魚、玄米など、ビタミンB2はレバーや卵、アーモンドなどにそれぞれ多く含まれています。

できるだけさまざまな食材を取り入れるよう心がけることで、バランスよく栄養素を摂ることができます。

妊娠中の夜ご飯に合う副菜のレシピは?

ほうれん草や小松菜などの青菜類や大豆製品、きのこ類を使ったレシピがおすすめです。

ほうれん草や小松菜のおひたし、きのこ類を加えた味噌汁などを副菜に取り入れると、妊娠中に積極的に摂りたい葉酸や鉄分、カルシウムなどが補えます。

また、豆腐などの大豆製品は手軽にたんぱく質を補給できます。特に、たんぱく質の必要量が増える妊娠後期にもおすすめです。

まとめ|妊娠中も栄養をバランスよく摂ろう

妊娠中は、お母さんや胎児の健康のため、鉄分や葉酸、カルシウムなどを積極的に摂る必要があります。

一方で過剰摂取に気を付けたい栄養素もあることから、妊娠中はさまざまな食材を取り入れながらバランスの良い食事を心がけることが大切です。

本記事で紹介したおすすめのメニューも参考にしながら。お母さんと胎児の健康につながる食事を摂るようにしてください。

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