成長や美容に欠かせない亜鉛。サプリメントなどで補給している方も多いのではないでしょうか。
亜鉛は欠かせない栄養素であるのにもかかわらず、世界人口の3分の1は亜鉛が欠乏していると言われています。
本記事では、亜鉛の吸収を阻害する栄養素を紹介します。
それらが含まれている食品も併せて紹介しますので、参考にしてください。
亜鉛の吸収を阻害する栄養素【含まれている食品も】
亜鉛の吸収を阻害する栄養素は4つあることが明らかになっています。
フィチン酸
フィチン酸が多く含まれる食品
米のふすまなどの穀物・豆類
フィチン酸はミネラルと結合する作用を持っています。
ミネラルである亜鉛もフィチン酸と結合してしまうため、身体が吸収するのを阻害します。
ただ、フィチン酸は決して身体に悪いものではなく、貧血予防や血流改善に働く良い一面もあります。
避けた方が良い栄養素ではないので、そこまで気にかける必要はないでしょう。
過剰な食物繊維
食物繊維が多く含まれる食品
野菜・果物・豆類
食物繊維の中には亜鉛と結合する作用を持つものがあります。それらが亜鉛と結合し、亜鉛の吸収を阻害します。
食物繊維が亜鉛の吸収を阻害する理由をもっと詳しく(クリックで詳細)
カルボキシメチルセルロースのカチオン交換能
食物繊維の一つに、カルボキシメチルセルロース(CMS)というものがあります。
CMSはカチオン交換能(陽イオンを保持する能力)を持っており、陽イオンである亜鉛イオン(Zn^2+)も保持します。
CMSと結合した亜鉛は吸収されないため、亜鉛の吸収を阻害します。
ただ、食物繊維もフィチン酸と同じく身体に悪い栄養素ではありません。むしろ摂った方が良い栄養素です。
しかし、サプリメントなどで過剰に摂取してしまうと、亜鉛の吸収が阻害されるだけでなく便秘や下痢などを起こすことが知られています。
普段の食事で過剰量になることはほとんどありません。
サプリメントを摂るときは、目安量を参考に、適量摂るようにしてください。
リン酸
リン酸が多く含まれる食品
加工食品(添加物として)
リン酸は亜鉛と結合することによって吸収を阻害します。
リン酸はフィチン酸や食物繊維と違い、摂取しない方が良いものです。
主に食感の向上や防腐を目的に添加物として使用されます。
加工食品自体が健康に良いものではないので、できる限り控えるようにしましょう。
シュウ酸
シュウ酸が多く含まれる食品
ほうれん草などの葉菜類、たけのこ、コーヒー
シュウ酸は亜鉛と結合することにより吸収を阻害します。
シュウ酸は尿路結石の原因となる物質であり、過剰な摂取は身体に害です。
シュウ酸は葉菜類に特に多く含まれていますが、ゆでることでシュウ酸の量は半減します。
葉菜類はゆでてから食べるように心がけましょう。
参考文献
Wapnir RA. Zinc deficiency, malnutrition and the gastrointestinal tract. J Nutr. 2000;130(5S Suppl):1388S-1392S.
亜鉛の吸収が減ると【亜鉛の欠乏症】
亜鉛の吸収阻害や摂取不足によって摂取量が減ると、さまざまな悪影響が出ることが明らかになっています。
亜鉛不足による主な症状
- 成長障害
- 味覚障害
- 脱毛
- 皮膚炎
- 免疫力低下
亜鉛はDNA生成に必要な栄養素ということが明らかになっています。
幼少期に亜鉛が欠乏すると身体の成長が遅くなってしまいます。
身体が成長した後でも、亜鉛は重要な役割を担います。亜鉛は肝臓や膵臓・腎臓などの臓器維持に欠かせません。
さらに肌のターンオーバーや毛量の維持にも関わっており、美容にも欠かせない栄養素です。
亜鉛の美容効果
- 皮膚炎の抑制
- 爪の正常な成長
- 毛髪量の維持
- ターンオーバーの促進
肌・爪・髪で悩んでいる方は、亜鉛を積極的に摂取してみてはいかがでしょうか。
参考文献
Baum MK, Shor-Posner G, Campa A. Zinc status in human immunodeficiency virus infection. J Nutr. 2000;130(5S Suppl)
さらに表示
Hambidge M, Krebs N. Zinc and growth. In: Roussel AM, ed. Trace elements in man and animals 10: Proceedings of the tenth international symposium on trace elements in man and animals. New York: Plenum Press; 2000:977-980.
亜鉛は一日にどれだけ摂ればよい?【亜鉛の摂取基準】
亜鉛の摂取基準は以下のように定められています。
男性
1~5歳 :3~4mg
6~11歳 :5~7mg
12~17歳 :10~12m
18~74歳 :11mg
75歳以上 :10mg
女性
1~5歳 :3mg
6~11歳 :4~6mg
12歳以上 :8mg
耐容上限量(過剰摂取となる量)は30mg以上となっています。
健康のためには12mgを目標に摂取するのが良いでしょう。
亜鉛が含まれている食品とその含有量
食品名 | 亜鉛含有量 | 食品の量 |
牡蠣 | 14.0 mg | 15 g (1個) |
うなぎ | 2.7 mg | 100 g(1串) |
豚レバー | 6.9 mg | 100 g |
牛もも | 4.8 mg | 200 g |
切り干し大根 | 2.1 mg | 10 g(乾燥) |
かぼちゃ | 7.7 mg | 10 g(大さじ1程度) |
アーモンド | 3.6 mg | 14 g(10粒) |
必要量以上の摂取はできていそうですか?
亜鉛は体内に蓄積できないため、継続的な摂取が必要な栄養素です。
足りていなさそうであれば、サプリメントを試してみるのも良いですね。
参考文献
文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
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香川明夫(監修):八訂 食品成分表2021. 女子栄養大学出版部, 東京, 2021.
【まとめ】亜鉛の吸収を阻害する食べ物について
亜鉛は、フィチン酸・過剰な食物繊維・リン酸・シュウ酸によって吸収が阻害されます。
ただし、フィチン酸・食物繊維は身体に必要な栄養素なので、まずはリン酸・シュウ酸の摂取を控えるようにしてみてください。
また、亜鉛はサプリメントでも摂取することができます。摂りすぎには注意ですが、亜鉛が多く含まれている食品が苦手という方は活用してみてください。
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