肉と肉を「くっつけた」ことはありますか?
食品添加物は、味を整えたり見た目を良くしたりするものが多いですが、「肉同士をくっつける」ものもあるのです。
本記事では、肉を結着させる作用を持つ「トランスグルタミナーゼ」を取り上げ、肉がくっつく理由や、購入方法を解説します。
そもそもトランスグルタミナーゼとは?
トランスグルタミナーゼは酵素の一つで、たんぱく質同士を結合させる作用を持っています。
食品業界では、肉同士を結着させる目的でハムやソーセージに使用されています。
「トランスグルタミナーゼ」という名前や「肉を結着させる」という性質だけ見ると、何やら怪しそうですね。
しかし、大豆やビート、人間の体内にも存在する酵素ですので、決して危険なものではありません。
突然ですが、肉料理にパイナップルが入っている理由を知っていますか?
答えは、肉を柔らかくするためです。
パイナップルにはたんぱく質を分解する酵素が含まれているのですが、その酵素が肉の繊維を分解することで肉を柔らかくしています。
トランスグルタミナーゼはこの逆、たんぱく質を結合させることができます。
出血時に血が固まってかさぶたになるのもトランスグルタミナーゼのおかげです。たんぱく質同士をつなぎ合わせて、かさぶたを作っているのです。
参考文献
Falcone P, Serafin-Fracassini D, DelDuca S (1993) Comparative studies of transglutaminase activity and substrates in different organs of Helianthus tuberosus. J Plant Physiol 142:263–273
トランスグルタミナーゼはどこで販売されている?
肉をくっつけることはあまりないと思いますが、切れ端を集めて一つのお肉にできたり、家庭で成形肉が作れたりと、あれば便利に使用することができます。
残念ながら家庭用のトランスグルタミナーゼは流通していないのですが(2022年8月情報)、トランスグルタミナーゼの入手方法をまとめましたので、必要な方は参考にしてください。
味の素の”アクティバ®”がおすすめ
現在入手できる方法で、一番のおすすめは味の素社の「アクティバ®」です。
アクティバ®の成分(クリックで詳細)
トランスグルタミナーゼ | 0.4% |
塩化アンモニウム | 8.0% |
乳糖 他 | 91.6% |
日本では家庭用のトランスグルタミナーゼが流通していないため、業務用サイズを購入する必要があります。
1kgで7000円と多量で高価ですが、これより小さいサイズはないようです。
トランスグルタミナーゼは少量でたんぱく質同士をつなぐことができるため、1回の使用量は数gほどとなります。
1箇所だけの結着であれば1gもいらないくらいです。
それらを考慮すると、100~1000回ほど使用しないと使い切ることができません。
手軽に使い切れる量ではないため、よく考えてから購入しましょう。
海外輸入品は送料が高くつく
https://modernistpantry.com/products/moo-gloo-rm-transglutaminase.html
海外では小分けのトランスグルタミナーゼが市販されています。
50gで1500円ほどの家庭用にぴったりの商品も販売されていますが、日本から買うと高額な送料がかかります。
試しにカートに入れてみると
1500円ほどの商品も送料込みだと16000円になってしまいます。
これを買うのであれば7000円でアクティバを買う方が量的にもお得です。
トランスグルタミナーゼでなぜ肉がくっつく?
トランスグルタミナーゼをもっとよく知りたい方のために、肉がなぜくっつくのかを解説します。
肉には、たんぱく質が豊富に含まれています。そして、そのタンパク質は20種類の「アミノ酸」で構成されています。
その中に「グルタミン」と「リジン」というアミノ酸があるのですが、トランスグルタミナーゼはその2つをつなぎ合わせる働きをします。
TG:トランスグルタミナーゼ Gln:グルタミン Lys:リジン
このように、分子レベルでつなぎ合わせるため、しっかりと肉がくっつくのです。
参考文献
Kieliszek M, Misiewicz A. Microbial transglutaminase and its application in the food industry. A review. Folia Microbiol (Praha). 2014 May;59(3):241-50. doi: 10.1007/s12223-013-0287-x. Epub 2013 Nov 8
【まとめ】トランスグルタミナーゼについて
肉の結着剤「トランスグルタミナーゼ」について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
トランスグルタミナーゼは動植物内にも存在しており、用法通り使用すれば安全な物質です。
家庭用サイズの販売はされていませんが、興味がある方はアクティバ®を購入して、肉をくっつけて見てください。
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